Edinburgh Festival Fringe and Edinburgh International Festival 2018 (追記しました)

 一つ一つに感想を書く余裕がないので、ざっくり観たもののリストと簡単なコメントを。鑑賞直後にツイッターに走り書きしたものをもとにしているので、第一印象だけな内容が多いです。タイトル、作家、演出家、出演者などなどのクレジットは検索可能な程度で省略してます。あと、日付も省略してます(時間を打ち込むのが大変…)が、並びはほぼ観た順番です。ちなみに滞在期間は8/17-8/27でした。

 パフォーマー、カンパニーによっては毎年フリンジ参加している場合も多いので、今後の参考になれば。

(書洩らしていた作品を一番下に追記しました。)

 

Xenos by Akram Khan

 カーンの名前だけにつられていったんですけど、私この人合わない、を確認する会となってしまった…。ダンス作品で、動きに直接的な意味が見えるというのがとても苦手で、それがドラマチックに密なエネルギーでもって多用されていたところがどうにも合わず。キレッキレの動きはとても美しかったけれど、だからこそ妙に意味深な振りが気になってしまう。フルレングスの作品を初めて観たので比べられないのですが、他の作品でもそうなんだろうか。ちょっと確認したい。ロンドン五輪開幕式のパフォーマンスが印象に残ってるんですが、まぁあれはちょっと文脈が違うしなぁ。

 

Check UP by Mark Thomas

 NHS70周年に合わせ、現代英国でNHS制度がどうなっているのか関係者のインタビューを基にマーク・トーマスが語りまくる(*70周年とあって、NHSテーマの作品は他にもいくつか)。テーマはとてもクリアで、彼のメッセージにもちろん異存はない。ただ、NHSというか医療福祉制度にまつわる問題は当然のごとくものすごく多岐にわたっていて、そして結論が出ない。その広さ深さを関係者インタビューを起点に見せていくので、構成がルースになってしまうというか、ちょっとWIPっぽさがある。内容自体はとても面白いのだけど、もう少し特定の問題やインタビュイーへのフォーカスがあると個人的にはもっと入り込めたかもと思う。でも問題系の広さを示すのが大事ってのもわかるので、作品にはとても納得している。

 

The Basement Tapes by Stella Reid
 魅力的な役者さんなんだけど、スクリプトが惜しい。テープレコーダーがキーアイテムとはいえ、一人芝居で録音音声多用するのはもう少し工夫が必要と思う。
 

Revelation by James Rowland

 精子ドナーってテーマですでに面白そうと思ってたけど、予想を超える重い物語がボディブローのように効いてくる。ローランドがクリスチャンてのが超ポイントにも関わらず語りの中ではその重要性はみせず、でもパフォーマンス全体を支えさせているのが巧い。ちゃぶ台返し的エンディングも良い。これ、レイブンヒルのHandbagをちょっと思い出す設定(*友人のレズビアンカップルへの精子提供という設定のこと。Handbagはゲイカップルとレズビアンカップルで「家族」を作るというのがメインの筋の一つで、ローランドが自伝的パフォーマンスなのに対し、こちらはフィクション。)。でもHandbagがゴリゴリバッドエンドなのに対し、こちらはどうにか希望を見つけようとするラスト。作り手の作風もあるけど、20年のキャップを思うと、時代なのかなとも感じる。

*私のとなりの席の人が文字通り号泣しており、何か思うことがあったんだろうなと思ってたんですが、別の日に観た友人がやはり、めちゃくちゃ泣いてる人がいた、と言っていたので、どうもある層にピンポイントで刺さる作品だったようです。(ちなみに泣いていたのはどちらも男性でした。)

 

User Not Found by Dante or Die and Chris Goode

 近しい人が亡くなった時、その人のSNSアカウントをどうすれば良いのか、という問いをめぐるイマーシブ系一人芝居。これ、パートナーを亡くしたゲイ男性が主人公で、その設定に一瞬驚いたんですが、いや驚くことでもないわなと思い、いやうちの国の同性カップルの権利ってデジタルアセット以前…と思い至る。そういう意味で私の感覚では情報過多に思えたのは正直ある。あと、親子間(子が先に亡くなる)の方が、デジタルネイティブ世代の切り替わりという意味で、よりテーマが掘り下げられるような気はしたけど、これも私の感覚によるのかも。達者なパフォーマーさんでしたが、ヘッドフォン&スマホ&カフェでイマーシブにする必要があったのかはちょっと疑問。私はむしろこうした装置のために意識が散ってしまった。

 

Ulster American by David Ireland

 尖ったポリティカルな笑いはすごく面白かったのだけど、ヘビーな政治問題を3人芝居でこれだけたくさん扱うことで相対主義っぽくなってる気も。三つ巴になっちゃうコメディの構造が、今回の政治トピックではあまり生きていない気が。セット、演出がシットコムさが強いので、テレビでやっても良いんじゃないかと思った。

 *アイルランドの『キプロス・アヴェニュー』は来春、ロイヤルコートで再演予定。

 

La Maladie de la mort by Marguerite Duras, dir. Katie Mitchell

 決してつまらなくはなかったんだけども、映像と舞台の表象の対比でこの手法(*カメラ越しに見えるものは実際に映しているものとは全然違う、ということを見せるタイプの編集/演出を指している、はず(ツイート当時の私))は何番煎じだろうと…。そしてなんでデュラスのこのテキストでこれやろうと思ったのかしらと…。丁寧だなぁ上手いなぁとぼんやり眺めているうちに終わってしまった。てか、わりと結構テキストがダメなんじゃないのというか、これさっきのUlster…のノリでやったらコメディだよねと思えるような感覚の古さがあり。私としては愛に飢えてこじらせたおっさんの話はもうBLで十分だし、ここを演出的に関係性の再解釈でアップデートすべきではと思う(*拗らせたおっさん、は上記の映像テクニックで抽象化されてたんですが、相手の女性は逆に映像の中の人としてドラマチックな存在を確立してしまったような演出で、二人の関係性自体は別に変わってなかったんです)。

 

Electrolyte by Donnacadh O'Briain

 これ面白いです。スコッツマンのゴリ押しを信じてよかった。音楽系スポークンワードだけど、バンドの設定が上手く物語に取り入れられてるし、クライマックスの語り手視点の転換も鮮やか。個々のお話自体はわりとありきたりではあるけど、語りのレイヤーの重ね方、音楽の組み込み方、そういう構成が巧み。その上でパワフルな楽曲でテクニカルなところを考えさせずあえて勢いで持ってっちゃう。

 

Riot Days by Pussy Riot

 メンバーのM・アリョーヒナがPRの活動を記した著作Riot Daysの抜粋のシャウトとパンクロックのライブ。ものすごく扇動的で詩的な言葉がビートの効いた音楽と彼女たちのパフォーマンスとミックスされて体が動かざるを得ないパワフルさ。ステージ正面の観客の勢いは特にすごかった。

 フリンジ参加に際しアリョーヒナがロシア政府から渡航禁止を言い渡されており、その事件と出国までの詳細は新聞報道も出てるんですが、開演前のMCで、実はイギリスへの入国手続きでも問題があり、曰くイギリスの入管の方がより厳しかったと。私はイギリス人ではないけど、自分の国が彼女の来英トラブルに関わってるって聞いて乗れないだろ普通、と思ってヘドバンとかしてる観客にすごい醒めつつ、でも同時に彼女たちのパフォーマンスの巻き込む力もひしひし感じてて、途中からひどく混乱して、デモやアクティビズムのことをずっと考えていた。私は、デモがとても苦手でめったにいかない。大勢の人の中でコールやスピーチやパフォーマンスに囲まれてると、冷静な判断が出来なくなるタイプだなと自覚があるので。だからこのライヴに乗っちゃう人の考えは理解できないけど感覚はわかる。劇場なら平気かなぁと思ったけど甘かった。取り乱して帰路についた。

 

Best Dad Ever by Ken Cheng

 アヒアさんを見逃し夕方まで散歩するかとウロウロしていたところべドラムシアター前で宣伝のお姉さんに捕まり、今日のチケットあと数枚だよ!の言葉にノセられて飛び込み。思わぬ収穫でした。スタンダップとしては粗いけど内容が良かった。コメディじゃないフォーマットでも良いかも、と思う。中国系イギリス人の2世で、かつその事と深く関わりながら個別ケースでもある自らの家庭事情を、父親の存在に落とし込む形で語るのですが、カラッとした口調と裏腹に置かれてるのは複雑な状況で、その状況のクリアに出来なさが面白くも切なくもあり。移民二世のコメディはこれまでも見た事あるけど、東アジアの人はほぼ初めて。文化背景が近い分、親との価値観のコンフリクトとか、抱える葛藤は比較的わかりやすいように思った。

 

My Left/right foot by Birds of Paradise adn National Theatre of Scotland

 マイノリティの役は必ずその当事者が演じるべきか問題への一つの回答となる作品(その結論がクライマックスなのでオチは伏せとく)。上演時間短いので展開早くて、もうちょい掘り下げた方がという部分もあるけど、勢いあるミュージカルコメディ。手話通訳日かなと思ったら、手話通訳者というキャラクターだった。物語に出たり入ったりが絶妙で、時に他の登場人物と会話し、時にモノローグをそっと訳す。

*障がい者の役を障がい者がやるべきか否か、というキャスティング問題をめぐっての、とあるアマチュア劇団のドタバタコメディ。オチですが、大まかに書いておくとすれば、障がい者の役はやはり障がい者がやるべき、でも演じる役と全く同じ障害/経験を持った役者はいない(その意味でフィクションである)、という結論。いろいろ議論があると思いますが、今の演劇業界としては最適な判断だと個人的には思います。作品自体も、この結論が絶対だという見せ方ではなく、あくまでも暫定的にこの選択をする、という印象を受けました。(全編稽古場風景で、実際にこの劇団が作った舞台がどうなったかは描かれません。)

 

Unsung by BigMouth
 男性政治家の公私のコンフリクトと観客にだけぶちまけられる本音の間を行ったり来たりの一人芝居。マスキュリニティを政治家のキャラクターで掘り下げるって切り口では意外となかった気がする。ただ見せ方はもうちょい工夫が欲しいというか、えらいどストレートなソロパフォーマンスなので、奇をてらうくらいでもと思う。

 

The Ballad of the Apathetic Son and His Narcissistic Mother 

 母息子関係の話で実の親子のパフォーマンス。マザコン方面ではなく毒親方面の際どさが新鮮。ただラストは私としては過干渉ラインを超えてしまった感じがする。両者の語りのミックス、下手ウマなダンス、映像の使い方とシンプルながらmessyな感じが面白い。

 

When Harassy Met Sally by Fin Taylor

 シスヘテロ男性コメディアンがジェンダーセクシュアリティmetooに正面タックルして こんなに笑えるなんて!の驚き。しっかりupdateされたポリティカルビューとどうしても納得できない感覚の折り合いのつかなさを、誠実にかつエネルギッシュに、情けなさに逃げることなく語ってく。冬に見たときよりテクニック的にも段違いでレベルアップしてると思う(プレザンスで満席でってテンションもあるにせよ。)情報量の多い怒涛のノンストップトークだけど、きちんと言葉が入ってくる。

 

Daniel Kitson

 これ何か書くべき感想があるかって言うと、深夜にだるーっとKitsonさんのおしゃべりと今作ってるネタを聞く会、という感じなので、それ以上でも以下でもなくというか。楽しかったけど、さすがにスタンダップはしごのあとで、宿につくのが午前2時は疲れた…。(*0時開始でした…。)

 

A Fourunate Man by Micheal Pinchbeck

 英国最初のGPの一人である医師の伝記を元に、二人のパフォーマーが彼の生涯を追う、という作品ですが、実は本題はこの医師の人生ではなく、一冊の伝記をいかに語るかの技法の方。複数のナラティブをパラレルに走らせたりメタに置いたり、ぱっと見とても静かだけど遊びまくっている。ピンチベック作品を観たの3年ぶりだけど、彼の関心は技法や形式なんだと確信した。

 

The Infinite Show by Mark Watson

 アダム・ヒルズが来なくなった今、新たな癒やしコメディアン枠をと思って入れました。安心して大笑いして気持ちよく劇場出てきた。ちょっとミーハー入ってる自覚はありつつもこのチョイスは正解でした。(でもメインのネタは離婚話なのでそこそこハートブレーキング感)

 

Shake a Leg by Andrew Maxwell

 三年ぶりに見たけど、なんか妙にペシミスティックだった。ネタがつまんないというより、全体の空気が落ち込んでどうも笑いにくい感じ。今回がたまたまなのかなぁ。まぁ、ブレキジットから陰謀論、反ユダヤまでがっつり扱って暗い気持ちにならない方がどうかしてるわけではあるが。

 

The Last Straw by People Show

 これ面白いかどうかはわりとどうでも良くて、イギリスで最も設立の古い現役のパフォーマンスカンパニーてだけで観に行った。正しく前衛というかイギリスで言うところのexperimentalってこれよね、という感。お勉強というと言葉が悪いけども、英国パフォーマンスの歴史をしみじみ感じる。

 

Queens of Sheba

 黒人女性が受ける複合差別をカラッとしたコミカルなパフォーマンスで見せる。負の経験をゴムが弾けるようにパワフルさに転換してて、その明るさがすごい見応え。ブラック女子あるあると思しきネタは私はわからなかったけど一部観客の爆笑をかっさらってた。今回のフリンジで見てきた中で、ダントツで黒人、女性観客の多い客席でした。

 

Bleed by Jordan Brooks

 コメディ畑で話題になってたところパフォーマンス界隈でもお薦めを見たので(J.ローランドさんがパンフで名前挙げてたり)。見事にコメディ/パフォーマンスの境界を突っ切る作品だと思う。ただ、ぶっちぎり方が(スタンダップ)コメディのフォーマットをグリグリ壊していく感じなので、普段コメディを観ない人にはちょっと勧め辛い。でも演劇・パフォーマンス的にもとても面白いです。コメディアンの人には怒られるかもだけど、パフォーマンス作品としての掘り下げ方も見てみたいです、この人。

 

Angry Alan by Penelope Skinner

 これ良かった。尺延ばして演出しっかりつけてぜひツアーを。men's rightsキャンペーンにはまり込んでいくある地方の白人中年男性の姿。トンデモな男性差別の理屈に笑ってしまうけど笑えないのはこれが実際に人を社会を動かしていること。日本でもアクチュアルなテーマではないでしょか。

 

Underground Railroad Game by Jennifer Kidwell and Scott R. Sheppard 

 これ、ちょっとまだ判断が付かないというか、南北戦争&黒人差別問題を現代のinterracialな恋愛関係を通じて描く方法のラストがこのセックスでいいのか?(*いわゆるSMと思われる行為でした(黒人女性と白人男性のカップルで黒人女性がSの側))と考え込んでいる。コミカルな二人芝居で、役者さんも魅力的だけど、転換ごとにスピードが落ちがちなのは残念。

 

The Political History of Smack and Crack by Ed Edward

 昼間にundergroundを観ていたもんで、歴史的事件と個人の経験が重なる的なナラティブ(しかも男女二人芝居)で比べてしまう。んでunder...のが面白い。テーマだけでなく、たぶんスクリプト、役者もあまり良くなくて、今誰が誰に喋ってる?と困惑することが多い。

 

Square Go by Kieran HUrley and Gary McNair

 楽しい〜そして可愛い〜!思春期男子のマッチョテーマは一歩間違えると地雷ですが、メタシアターな(お客いじりとか実年齢ままなビジュアルとか)要素が感傷を破壊してくる笑。(いくらダサくても)ちゃんと大人に見える、というのも今マスキュリニティを語る上では重要な仕掛けだと思う。

 

Best Of... by Richard Gadd

 これはすげぇ。別の仕事との兼ね合いで今回は総集編だなんて、とてもそうとは思えぬクオリティ。明日友人が観るので詳細はそれまで伏せとくけど、ガッドさんの伏線や仕掛けの巧妙さは演劇パフォーマンス畑の人にもおすすめです。

*伏せなくて大丈夫になったので追記。 夏前に放送されたラジオのネタ(生き別れの父親についてガッドが語るという放送内容だが、いよいよ放送が始まるという段になって問題が起こりまくり、パフォーマンスどころではなくなってしまうというドタバタ)をもとに、過去作のネタやちょっと新ネタも含めての、ベストオブ、なショー。彼、伏線張り巡らしたりメタシアター的構造を作るのが得意技なのだと思うんですが、そうしたネタが決まる時の気持ちよさは一級です。

 

Zugunruhe by Tom Bailey, Mechanimal

 ガードナーさんが変な褒め方してるなと気になって飛び込んだら予想以上の大当たりだった。鳥の移動と人の移動を緩く重ねながら、その核にある環境問題、難民問題に静かに触れる。何がすごいってこの地味目なモチーフとシリアスなテーマをおじさんパフォーマーが文字通りに鳥になったり人になったりして見せるという、どうしてそうなった感。でもちゃんと機能してるというか見終わったあとはこの手法がベストと思える。これ、ロンドン行きます。フォレストフリンジがあればそこに拾われてたろうにと思う。お客さん入ってないのが残念。

 

 After the Cut by Gary McNair

 うーん、Square Go 見た後だと(あちらは共作とはいえ)見劣りしてしまう。ディストピアコメディに振るか、しっかり社会派に持っていくかどちらかに思い切ればいいのに。あと、単純に役者さんがちょっと微妙だったと思う。

 

Midsummer by David Greig

 2008年初演作品の改訂再演版。フェスティバルという場にふさわしい幸せな祝祭感あふれる舞台。グレイグ版またはエジンバラ版夏の夜の夢ともいえると思う。なんてことないラブストーリーなんだけど、会話の一つ一つが愛おしいなと思わせる、戯曲、演出、俳優のコンビネーションです。

 

The Prisoner by Peter Brook

 ブルック、おぉブルックよ…。というわけで、私は二つ星レビューに賛同します。とにかく物語がひどい。なぜ原作ものしなかったんだというくらい、誰が書いたんだこれ状態。俳優の佇まいや空間の使い方の美しさは確かにあって、目を引く部分は確かにあるんだけど、キャラクターもストーリーも台詞もほんとにだめなので(特に台詞の詩情のなさは致命的)もう無言劇にしろやと思うくらいだった。俳優さんがもったいない…。あと、唯一の白人俳優の演じる役がザ・オリエンタリストなの、単に無頓着なの確信犯なの?という謎。その意図さえもわからない脚本レベル…。

 

Jew by Ari Shaffir

 友人のお勧めから。ユダヤ人である自身の経験を聖書と絡めつつ、ダーティにでもクリティカルに笑いを取っていく。ユダヤ陰謀論ネタ、Maxwellさんもやってたけど、あちらがかなり深刻なイシューとして扱っていたのに対し(その態度は全く正しいわけですが)、Shaffirさんは、陰謀論?はっはーそうだよほんとだよ!という返し笑。マイノリティのコメディを当事者性だけで語るのはどうかと思いつつ、でもその立場にいないと笑いにできないことはあるよな、と思いながら見てました。

 

DollyWould by Sh!t Theatre

 キッチュなやつ入れてなかったなと思って行きました。去年も同作で来ていたそうです。カントリーミュージックのトップシンガーであり、ゲイアイコンでもあるDolly Partonの大ファンという二人の女性パフォーマーが、ドリーのドラァグ的ファッションを真似つつ、その振る舞いを、ドリーの作ったテーマパークや彼女のブランドグッズの氾濫、クローン羊のドリー、ドリーのテーマパークの近くにある医療センターの死体の腐敗過程の実験の様子を、身体のコピーを軸に繋げていく。はちゃめちゃなビジュアルに対し、うまい構成です。観客の不快さを刺激するポイントが、ちょっとキム・ノーブルっぽさを感じて(彼のようなdepressiveな感じはほぼないのだけど)そこ結構気に行った。テーマパークを(助成金でw)超エンジョイしてる写真の合間に、唐突に腐乱死体の実験の写真が容赦なく入ってくる。確信犯です。

 

Status by Chris Thorpe

 これテーマの扱いとして私的にはダメでした。英国の超強いパスポートを持っている自身の葛藤を語るモノローグではあるのですが、これダムタイプの『S/N』に同じテーマのシーンがあって、そのラディカルさのインパクトとどうしても比べてしまった。現実的にはThorpeの態度がとても全うなものだと思いつつ、やっぱり私は『S/N』の「私は夢見る…」のフレーズの中で、パスポート破るっていうあのシーンがナショナリティや国境を考える時にはものすごく重いものとしてある。(あとエピソードとして、Thorpeは二冊パスポートを発行されているという経緯があるので、なおのこと、一冊破れやと思ってしまった。)

 ビザ関係でいえば、ヴェヌーリ・ペレラのVisa Godのパフォーマンス(*タイトルを忘れた…ごめんヴェヌーリ汗。手塚夏子さんのFloating Bottleプロジェクトの作品の一つで、私が観たのはWIP版。)とか、非白人コメディアンのボーダーネタとか、そういう視点を思いだしてしまう。彼、彼女たちがそれでもコミカルにこの問題を扱っているのに、英国の白人男性が深刻に悩んでしまうのって、やっぱりのれないなと思う。

 
Nigel Slater's Toast
 自分のコンディションが悪くて眠くなってしまった…ごめんなさい(最終日に朝の観劇入れるのはきつかった)。イギリスで有名なフードコラムニストの自伝の舞台化。思い出深い出来事と料理がシンクロしてるのだけど、実際に物語に出てくるお菓子が観客にも配られ一緒に食べる趣向を凝らしてる。
 

Home by Geoff Sobelle

 フィジカルシアターという宣伝だったと思うけど、少しアクロバティックな感があって、ヌーヴォーシルク的な印象が強かったです。フィリップ・ジャンティぽいなとも思いました。加えてステージマジックのテクニックも駆使されてる。ある家の住人と思しき人々の生活がそれぞれオーバーラップする前半部と、とっ散らかった家で観客巻き込みまくりのホームパーティの後半部。スマートな身体パフォーマンス&しっかりしたエンターテイメント性で、フェスティバル演目としては文句なしの質。ただMidsummerにしてもこれにしても私が見た範囲のインターナショナルフェスティバルの演目は祝祭感貫く感じで、社会に特に問うことはないのか、政治テーマはフリンジに任せてバランス取ってるのか、色々思わないではない。 

 

'75 by Kieran Hodgson

 おそらく今回観た中で唯一のガチブレグジットもの。自分の最大の理解者であるはずの母親が離脱に入れただって?というつかみから、とはいえそもそもEUとは何なのだと、EC/EU加盟に関わった政治家たちのリサーチをもとに繰り広げる一人芝居型コメディ。キュートなルックス、辛辣な突っ込み、誠実なメッセージ性と三拍子そろった良い舞台でした。で、作中で言われるまで全然気づいてなかったんですが、ブレグジット、テーマとしてはもう流行りを過ぎつつあるんですね。国民投票の時の空気を知らないし、ニュースで情報を得るだけなので、当然まだまだ盛りの話題だと思ってた。もちろん現実には全然何にも打開してないわけなので、流行り廃り関係なく、時間かけてリサーチして一本のネタに仕上げるホッジソンの態度はとても好感を持ちました。

 *この記事を整理している最中、離脱暫定合意案をめぐって内閣がひっくり返っております。いよいよ2019年3月から段階的に離脱が始まるので、来年の夏はまたブレグジットネタ盛り返すんじゃないかなぁと思います。

 

(以下追記)

bon 4 bon by Chang Dance Theatre

台湾のダンス作品(振付家はイスラエルのEyal Dadon)。良き!実の四人兄弟のダンサー達で、子供の頃の思い出をモチーフにしつつ家族とも友人ともダンスパートナーともつかぬ不思議な距離感。テクニック的にも上手いし、ユーモアの入れ方はチャーミングだし、唯一の不満は30分の小品だったことか。