うつかも

 かも?と言っている時点ではまだ元気なので、大丈夫。本当にやばくなったらブログどころではない。

 到着から三週間の疲れが着実にたまっている自覚はあったものの、ようやくスーパーバイザーとの面談も終えて本格始動というタイミング、周囲の顔と名前もだいたい一致してくるという時期、あまり休みたくないなぁと思っていたのが正直なところ。とはいえ根気詰めてがりがり机に向かってるというわけではなく、夜にはイギリスのドラマやコメディを見たり、好きな本を読んだりしていたし、それが息抜きや休息だと思っていた、し、休息とはそういうもんだろうと思う。

 今朝、アラームの時間を過ぎての寝坊。起きたはいいものの、何をするにもえらくしんどい。ぼーっとしてばかりもいられぬと、遅い朝食をとり、GPの予約やドコモの契約やらで数件電話をし、また掃除機でもかけてみたりするものの、昨日までと明らかにテンションが違う。外出の準備が鈍い。

 昨日は人文系院生のセミナーが二つ連続であり(早い時間の方は教員主導、遅い方は学生主導)夕方は学期初めということで学内バーで飲みに。先輩も同期もみないい人たちで、パブ飲み社交のハードルが高い現状ながら、それなりに会話を楽しむことはできたように思う。先週ゼミ同期であるトーマス兄さん(年齢は知らんがそういう雰囲気なのだ)に、だいたいイギリス人はパブでは天気か政治の話しかしないから困ったらそういう話題を振ればいいし真剣に聞くこともないよ、という優しいけどシニカルなアドバイスを受けたのだが、ほんとにみんなテリーザ・メイのスピーチのニュース映像をネタにして盛り上がってたので、兄さんの言うことは信用しようと思った。

(ついでに、トーマス兄さんはこのアドバイスの後、私の研究テーマの詳細を丁寧に聞いてくれた。「会話 'chat'」に混ざるのが苦手だと話した私への気遣いなのだろうが、それはとても印象に残っている。)

 ロンドン出身の人とオリンピック大変だね(彼は会期中エジンバラに逃げたらしい)という話をしたり、日本へ旅行してみたいなという話を振られたり、ベイビーメタルって知ってる?と聞かれたり、バー内で流れている(たぶんあまりメジャーではない)80年代のUKロックのMVを見て笑ったり、そういう風にその場にいられたことは、この三週間のうちのささやかだが大きな変化だ。今までで一番楽しかった、と言えるし、でもやっぱり今までで一番疲れていたように思う。

 留学経験があるということの慣れもあり、到着直後の目の前が真っ暗という状況をむかえずにすんだ分(幸い寮関係の災難には仲間がいた)、生活すべてにおいて楽しい部分だけ、あるいは何か「生産的な」苦労だけを見ていたような気がする。ずーっと気を張っている状態でもある。その糸が切れるとき、つまり鬱がやってくる時が恐ろしく、私は大丈夫だと常に言い聞かせている。

 10日前の私グッジョブ、だったのは大学のカウンセリングセンターへの登録と予約を済ませており、折よく今日が初回のセッションとなったからだ。もともと、自分のコンディションを伝えること、緊急時に利用できる段取りを整えておくことが目的だったが、結局やはりこのブログに書いてきたこと、出発前や日本での院生生活、それから精神科に通院しだしてからのことを話すことになった。

 私が双極性障害という病気で一番苦労するのは、負荷がかかっているときほど、どういう感情や状態、行動が病気のために生じていて、何がそうではないのかの区別がつかなくなることだ。すごく興奮している反面、不安だらけで些細な失敗にひどく落ち込む、という今の状態は、バイポーラーの二極のように思えた。カウンセラーは一言、それはいたって「ノーマル」な状態で、留学生だけでなく新入生がみな抱えている気持ちだと言った。少し泣いた。

 とはいえ、健康な人なら自然に治るケガが膿む、のが辛いところで、油断は禁物だと改めて思う。でも、鬱の波に構えすぎるのも、それはそれでひどくプレッシャーになるようだから、波が来たら抗うことなく流されよう、くらいの気持ちもたぶん必要なのだろう。

 そんなわけで、セッション後はまっすぐ寮へ戻り、ジーンズのまま寝て起きたら夜だった。過眠傾向も少し怖いけど、寝れるときは寝た方がいいのかもしれない。午後休の日、ということにする。