2018年8月~10月の観たものリスト

放置していた下書きを発見。もう半年前か…と冷や汗をかきつつ放流。(そんで、11月以降のもまたリストにせねばなのですね…)

 

 

夏は(若干軽躁的に)テンションが上がってガンガン観劇予定を入れがちなのと、それに応えているかのように注目作の上演本数が多いので、観るのに書くのが追い付かず、例によって観たぞ、の記録だけ取っておきます。

7月まるっと帰国しており、その間日本でも複数本舞台を観ているのですが、そっちは今のところまとめる予定はありません。

 

2018年8月8日 14時30分

Fun Home at Young vic by Lisa Kron, dir. Sam Gold, based on the Graphic Novel by Alison Bechdel

トニー賞受賞のミュージカルのトランスファー。レズビアンの漫画家が自身のセクシュアリティとクローゼットのゲイだった父親との関係を描いた自伝的作品の舞台化です。日本でも翻訳上演がありました。ミュージカルとしては出演者数は少なくこぢんまりした雰囲気ですが、鋭く刺さる物語。後半の改築された実家の美術は圧巻、そして父親の心情を表すかのように不気味です(NYと演出が変わっているっぽい?)。

 

同日 18時

£¥€$ (LIES) at Almeida theatre, dir. Alexander Devriendt

観客参加型。観客はそれぞれ銀行として架空の国に属し、自国のインフラへ投資したり国債を売買したりして、貨幣価値を高めて競い合う。ボードゲーム的なものとしての楽しさはあるけど、資本主義批判の主題はどこへ…。貨幣とは所詮フィクションで…的なベタなヒューマニズムへの回収も不満でした。あと、ゲームの構造的に、経済に疎い人はプレイするのに精いっぱいで、逆に詳しい人は本来金融市場にあるはずのシステムがなくて混乱(ゲーム用に簡素化されてるため)みたいなことが良く起こってた。

 

2018年9月4日 19時30分

Hamilton at Victoria Palave theatre by Lin-Manuel Miranda

言わずと知れたミュージカル賞総なめ作品。この時期ロンドン滞在中で、運よく直前にリターンチケットが買えたのでした。骨格としてはかなりの王道路線ミュージカルなのに、キャスティングと音楽の選択でここまで新鮮になるものかとびっくりしました。曲かっこいいです、サントラ買いました。

 

2018年9月7日 19時30分

Pinter Season 1 at Harold Pinter Theatre

ピンター後期作品の、特にポリティカルな要素の強い短編のコレクション。ピンターシーズンは6までキャストと作品発表があり、さらにトム・ヒドルストン出演の『背信』の上演が決まりました。普段ウェストエンドではかからない短中編やすごく初期ないし後期の作品が中心的に取り上げられているので、どれを見るにしても面白いと思います。(面白かったです!(過去形))

 

2018年9月8日 14時30分

Gecko at BAC

今わりと売れてる(?)フィジカルシアターカンパニー、これが初見でしたが個人的にはあまり…。ヴィジュアル的な綺麗さはあれど、内容的には隙が多い。どちらかというと、今回の観劇動機は復活したBACのメインホールをみたいというところにあり(3年前くらいに火災にあって、その時上演予定だったのがゲッコー。復活も同じカンパニーで、という趣旨)。綺麗に再建されてて良かったです。

 

同日 19時

King Lear

イアン・マッケラン主演、チチェスターフェスティバルシアターの製作です。サーの演技を堪能。解釈としてはリア王認知症路線でしたが、子ども返りをしてしまったような造形でした。

 

2018年9月11日 19時

Lehman Trilogy at National Theatre, dir. Sam Mendes

サム・メンデスはすげぇなぁと思いましたです。リーマンブラザーズの創立者兄弟の人生を3人の語り手/兄弟たちが語り継いでいく。これ、おそらくキャラクタライゼーションのないタイプの戯曲だったのではと想像するのですが、上手いことNTの観客のテイストにもあうような人間ドラマ的モメントを入れ込んでいて、それがとても良かったです。

 

2018年10月4日 19時30分

Poet In Da Cornar at Royal Court Theatre by Debris Stevenson

これ、あまり印象に残ってないというか、ヒップホップ/ポエトリーリーディング、ダンス、演劇のミックスなのですが、それらが上手く混ざっていないように感じ、またストーリーテリング部分のレベルもあまり良くなくて、結局関心が続かなかった(私のコンディションがちょっと良くなかったのもあるとは思う)。ただ、ロイヤルコートの方向性が少し変わってきてる、劇作家の劇場ってだけではなくなっている、という印象はじわじわ感じてはいます。

 

2018年10月13日 14時30分

I’m a Phoenix, Bitch at BAC by Bryonny Kimmings

これ、評価に躊躇してます。キミングスの子供が重篤な疾患を持って産まれてきた(亡くなったとは言ってないけど、ちょっとその辺もぼかされている)という話を、オートバイオグラフィーパーフォーマンスのお手本のようなフォーマットで語るのですが、そもそも題材がヘビーすぎて、そのヘビーさをコメディとか別の感性に昇華させない方向性なので(昇華させなくてもそれはいいのですが)どう受け取っていいかわからなかったんです。元々、自伝的な要素を作品に取り込むパフォーマーなので、この路線で作品製作を続けてたら、次はもっとつらい経験をしないと作品が作れなくなるのではないかと思いました。キミングスは好きなアーティストですが、そういう風に身を切って活動を続けて欲しいと私は思いません。

 

同日 20時

Summit at Shorditch Town Hall by Andy Smith

未来の「サミット」について、三人のパフォーマーが、手話や外国語を交えながら語る。これ、俳優のレベルをもっと上げて欲しかった、絶対良くなると思う。というか、スクリプト自体は、フォーマリスティックな面白さとダイバーシティの理念とユーモアがきちんとかみ合っていてレベル高いので、いやほんとキャスト変えてもう一回…。惜しすぎる。