Beginners by Tim Crouch at Unicorn Theater

観劇日:2018年4月7日14時

 

 Tim Crouchの新作は児童劇。週末、家族連れに紛れての観劇。

 大雨の夕方、レジャーに来ていた幼馴染の男女四人は、山中のコテージへ泊ることに。それぞれに家庭のトラブルや人間関係上の対立を抱えつつ共に一夜を過ごす中、彼らのもとに子供時代の自身が現れ、その子たちは大人である登場人物たちがかつて作りたかったお芝居を上演しようと奮闘する。

 ・・・というあらすじがあってるのかどうか、というのはわりとどうでもよくて、登場人物たちの背景がよくわからないところが多々あって、休暇のレジャーという設定の反面、登場人物の一人は母親(だったか?)のガンのために銃を持ち出すほどの抑うつ状態でもある。コテージの愛犬であるサンディが時に語り手として舞台に現れたり、子連れの女性のあやす赤ん坊が単なる人形でしかなかったり、銃もいざ撃ってみればおもちゃだったりと、と彼、彼女らの「幻想」と思しき子供時代の姿が現れるより以前に、この舞台上の世界がすでに独特のファンタジーになっている。

 4人の大人たちと、4人の子供たちとの関係はさまざまで、互いに全く関与しない関係もあれば、お互いに語りあったり、嫌いあったり、あるいは子供の頃の方が大人びていたりする。大人になることの、様々な悲喜こもごもの変化、のようなものをそうした姿から十分に見出すことが出来るが、しかしそういう見方をするのは、私がそれなりに「大人」だからだろう。なにせ今作は客席の半分は子供たちである。彼らからすれば、そういう大人のノスタルジーなんざどうでもよくて(あるいは「より」大人びていて、そういうお話も理解はするけどね、not for meだよね、てなもんかもしれない)私とは別の面白さを求めているのだろう。

 四人が子供時代に葛藤した舞台が、「もう一度」(おそらく実際には作ることが叶わなかったのではないかと思わせるものとして)上演される。筋立ての無茶苦茶な、ベタなヒーロー物語だ(とはいえ、配役がジェンダークロッシングだったりするところが素敵だ)。サンディをリーダーに、勢いだけで物語を作り上げていく過程は、その強引さゆえに力強く「(だらしない大人たちは忘れて)私たちを見よ」と訴える。イギリスの子役のレベルを今さら声高に言うこともないだろうが、その大人の切り捨て方の思い切りの良さは中々気持ちがいい。私はもはや大人の視点でしかこの作品を観れないけれど、子供たちにはぜひ感想を聞いてみたいところだ。

 ユニコーンシアターは児童劇、十代を対象とした作品を中心にプログラムしている劇場。(今作は9歳以上というレーティング。)そういうこともあって私の普段の関心からすると、意識しないとなかなか視界に入らない場所でもあるのだが、クラウチのようなアーティストも起用されていて目が離せないなと思う。日本でも、TACT/FESTなどの例があるけれど、それに近い感じかな。